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映画

鎖を解き放て! – BJCとROOTSから考える

自らの名を名乗ることさえ許されない人々がいた。一方の人々は、他方の人々を家畜のごとく使役し、彼らの名前を奪い、それから、自分たちにとって都合のよい名前を彼らに押しつけた。

しかし、そうして名を奪われた一人の男は、たとえ鞭打たれ、押しつけられた名を強要されても、祖国への想いを、その誇りを失うことは決してなかった。クンタ・キンテ。それが男の本当の名前だった。

悪いひとたちがやって来て みんなを殺した
理由なんて簡単さ そこに弱いひとたちがいたから
女達は犯され 老人と子供は燃やされた
若者は奴隷に 歯向かう者は一人残らず皮を剥がされた
Blankey Jet City 『悪いひとたち』から

西アフリカのマンディンカ族の村からアメリカ大陸に連れ去られ、奴隷として売られ非人間的な暮らしを余儀なくされるマンディンカの戦士クンタ・キンテにはじまり、20世紀の作家アレックス・ヘイリーへと至る、7世代にわたる『ルーツ』の壮大な物語は、アメリカの歴史であると同時に、アフリカの歴史でもあり、そして、人類の歴史である。物語の核心には、単なる事実の羅列でも、政治史でもなく、いつでも、「人間」がいた。

すさんだ心を持ったハニー ヨーロッパ調の家具をねだる
SEXに明け暮れて 麻薬もやりたい放題
つけが回ってくるぜ でもやめられる訳なんてないさ
そんなに長生きなんてしたくないんだってさ
それを聞いたインタビュアーが カッコイイって言いやがった
Blankey Jet City 『悪いひとたち』から

アレックス・ヘイリーは、自らのルーツを辿るこの物語を一冊の本に著し、やがてそれはテレビドラマとしてアメリカで、全世界で放映された。時を経て、日本のロックバンドBlankey Jet Cityは、「悪いひとたち」というひとつの歌を奏でた。Blankey Jet Cityの浅井健一が書いた詩には、ルーツを抱えて生きる僕らの今が、鮮やかにうつしとられている。明日への希望のメッセージとともに。

鎖につながれること。奴隷船。ムチ打ち。レイプ。ひどい苦難の中でも、クンタ・キンテとその子孫は、自分が誰であるかということを決して忘れなかった。

誇り高きマンディンカ族。カンビ・ボロンゴのほとりに暮らす戦士オモロ。そしてその息子、クンタ・キンテ。ある日、太鼓をつくるための木を探すために森に入ったクンタは、奴隷商人につかまり、そして、アメリカへと連れてこられた。再び自由を手にする日の夢を、クンタは娘のキジーに託し、それから、キジーは息子のチキン・ジョージに託した。

残酷な事件は いつの日からかみんなの一番の退屈しのぎ
残酷性が強ければ強いほど 週刊誌は飛ぶように売れる
その金で買った高級車 夜の雪道でスリップした その時
ヘッドライトに映し出されたのが 黒い肌に包まれたチキンジョージ
今日もあの気持ちのまま一人で歩いてる 街に真っ白いMILKを買いに行く途中
それを見たバックシートの男は 12月生まれの山羊座で
第三次世界大戦のシナリオライターを目指してる
日傘をさして歩く彼の恋人は妊娠中で
お腹の中の赤ちゃんは きっとかわいい女の子さ
Blankey Jet City 『悪いひとたち』から

20世紀末に発表された「悪いひとたち」という曲が、僕らに強く訴えるのはおそらく、歴史と、ルーツとともに生きる、「現代」の社会を切り取っているからであるだろう。ある意味で、歴史は現在の問題なのだ。

名を奪われるということは、遠い歴史の事実ではないことを思い起こしてみよう。例えば、ほんの10年程前にシステムとしてようやく終止符が打たれた南アフリカにおけるアパルトヘイト(人種隔離政策)。反アパルトヘイト闘争の指導者であり、後に大統領となったネルソン・マンデラの名ネルソンが、学校の先生に強制されたにすぎない名であるように、今でもこの地では、あの時代に押しつけられた名を抱え、生きつづけている人々がいくらでもいるのだ。

クンタ・キンテの子孫が、ドラマのラストに叫んだ「We is Free!」というセリフを、心の底から叫ぶことの叶わない人々が、今のこの世界に、はたしてどのくらいいるのか思い巡らしてみよう。戦争は少しも終わってはないし、権力に、力に翻弄され締めつけられつつも生きている人々は、悲しいことに、いくらでもいる。

それでも、同時に僕らは絶望する必要は決してないことを知っている。親が子に未来を託すように、希望は小さきものに宿り、やがて花開くことがあるということを知っているから。そして、「ルーツ」の物語が示してくれたように、この世界に生きるということは、決して単なる苦難の物語ではなく、いつでも、希望の物語でありつづけるのだから。

BABY Peace Markを送るぜ このすばらしい世界へ
Peace Markを送るぜ
きっとかわいい女の子だから きっとかわいい女の子だから
きっとかわいい女の子だから きっとかわいい女の子だから
きっとかわいい女の子だから …………………………
Blankey Jet City 『悪いひとたち』から

※『ルーツ』では、We is のような表現が頻繁に見られる。

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